• クライマックスシリーズを振り返る 2012.10.20 UPDATE

    日本シリーズへの出場権を巡るパ・リーグの頂上決戦は、あっという間に幕を閉じた。試合を決めた主軸の一打。意地を見せた4番の一発。そしてエースの力投――。今年の戦いは、これまで数々のドラマを生んできたクライマックスシリーズ(以下CS)の激闘の歴史においても、各チームの投打の中心選手たちの活躍が最も目立つものだった。

    ヒーローたちの軌跡

    2位・ライオンズ、3位・ホークスの2チームによって争われたファーストステージの初戦。この日の主役はホークス・攝津正、ライオンズ・牧田和久と、ともに今季チームのエース格として活躍した両投手だった。

    攝津は8回を投げて被安打4・無失点、牧田も9回を投げ切って被安打7・失点2。軍配こそ強力なライオンズ打線を封じた攝津に挙がったものの、両者の力投は甲乙付けがたいものがあった。今年のCSの中で、試合の最初から最後まで投げ切って完投したのは、この日の牧田だけである。

    また、この日の最終回、2点を追いかけるライオンズが無死満塁のチャンスを作ったが、それを内野ゴロの間の1得点のみに封じたのが、ホークスのリリーフエース・森福允彦だった。彼がこのときに抑えていなかったら、CSの流れ、そして結果は大きく変わっていたかもしれない。

    2戦目はライオンズが大勝したが、ここでは3番・中島裕之がチームに勢いを生んだ。3回表に秋山のタイムリー内野安打で1点を先制した直後の1死1,2塁の場面、ライトの頭を越える彼らしいタイムリー2ベースで満員の西武ドームを沸かせ、この回にライオンズは一挙7得点を挙げて試合を早々に決めた。

    1戦目では、終盤8回に一発出れば逆転という場面でゲッツーに倒れていた中島の、鮮やかなリベンジだった。

    そして運命の3戦目では、互いの主砲が魅せた。1戦目・2戦目と無安打だったホークス4番・ペーニャが4回に先制の2点タイムリー2ベースを放てば、その直後、今度はライオンズ4番・中村剛也が今CS第1号弾で追撃。試合は、3番・内川聖一にも当たりが出たホークスが何とか逃げ切った。

    2点差の終盤8回、2死1,2塁の場面で4番・中村がフェンスぎりぎりの大きなセンターフライに倒れて球場がため息に包まれた場面は、このステージのハイライトともいえる場面であった。

    続くファイナルステージ。舞台を札幌に移してからは、チャンピオンチーム・ファイターズの中心選手たちの独壇場とも言える戦いとなった。

    初戦、ホークスが2点を先制した直後の終盤7回、3番・糸井嘉男が起死回生の同点弾。一振りで相手の下剋上ムードを振り払うと、勢いに乗ったチームは代打・二岡が勝ち越しの一打を放ち、大事な初戦に勝利した。糸井は続く2戦目でも貴重な追加点となる2ランホームランを放ち、2夜連続でお立ち台に上がる。そして一気に勝負を決めた3戦目では、4番・中田翔の先制タイムリーが飛び出した。打の主役2人が、3試合で7安打・5打点の活躍でチームを引っ張った。また投げては、初戦の吉川光夫、2戦目の武田勝、そして3戦目のウルフの先発陣が、いずれも6回までを無失点に抑える盤石ぶり。ポストシーズンではしばしば、リーグ1位のチームが試合間隔の空きに苦しめられるものだが、今回のファイターズに関しては投打両面において、“実戦感覚”にまったく鈍りは感じられなかった。

    たった6試合、されど6試合。凝縮された面白さ

    144試合の長いペナントレースを戦った後に行われた、ファーストステージ3試合、ファイナルステージ3試合というたった6試合の決戦。戦いの前に話を聞いたファイターズOBの岩本勉氏はCSの魅力を「野球の面白さが凝縮される」と表現したが、まさにその通りの戦いだったと言えるだろう。6試合のうち、全ての試合において、エースピッチャー、もしくはチームのクリーンアップの選手がヒーローとしてお立ち台に上がった。例年以上に中心選手たちの活躍が目立つ、熱い戦いだった。

    最終戦後には、今季限りでの引退を表明していたホークス・小久保裕紀が、札幌の多くのファンの前で、両チームの選手による胴上げに涙を流すという、温かく感動的な光景も見られた。

    悲喜こもごもの至極のドラマ――。今年も、パのCSは熱く、そして魅力的だった。

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